特集3

未来へつなげ、ビッグプロジェクト

未知の目標へ向ってあらゆる知恵や技術を集結させながら、困難を乗りこえ、人々に夢と希望を与えるビッグプロジェクト。「世界一の技と人」の総合力によって成し得る壮大なプロジェクトは、新しい街をつくり、社会を変え、知的探求を続け、文化や知恵を未来へとつなぐ、人類の挑戦そのものといえるでしょう。


Big projects bring together all the innovative ideas and technologies towards achieving uncharted objectives, while overcoming difficulties and offering hopes and dreams to people along the way. The big projects accomplished through the collective strength of “the world’s unique technologies and of that of people” are nothing less than the challenges taken up by mankind itself, and they contribute to transforming our neighborhoods, changing our societies, continuing intellectual quests, as well as linking cultures and innovative ideas to the future.

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日本の翼、再び空へ

MRJ

展示協力 : 三菱航空機株式会社

Exhibition Cooperator: Mitsubishi Aircraft Corporation

約40 年ぶりの国産旅客機としての復活が期待される次世代の小型ジェット旅客機。戦後初の国産旅客機YS-11 以降で初めて、新しく国産旅客機として三菱航空機(株)を筆頭とし、多くの民間企業が参加して開発が進められています。95 万点におよぶ膨大な数の部品からなる飛行機の製造は、量産が実現すれば多くの雇用と経済効果を生み出すことが期待されています。日本の技術を結集した「日本の翼」の復活は、様々な夢と希望を乗せて今まさに飛び立とうとしています。

最先端技術を駆使した機体設計により、主翼・胴体などで徹底的に抵抗を減らす工夫をすることで、空気抵抗と騒音を大幅に減らします。また、従来の同クラスの旅客機に比べて2 割以上の大幅な燃費向上を実現します。尾翼を主体として、日本の誇る炭素繊維複合材料が採用されています。最新のコックピットや、スリムシートを採用した客室など、操縦士にも乗客にも快適な旅客機であり、世界中での活躍が期待されています。

MRJ is the small, next-generation passenger jet which is expected to revive domestic passenger aircraft for the first time in about forty years. MRJ is currently being developed by

Mitsubishi Aircraft Corporation with participation of a large number of private-sector companies as the new domestic passenger aircraft since YS-11.

MRJ開発の歩み

※上記写真は日本科学未来館の「THE 世界一展」での展示風景です。

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宇宙をもっと身近に

日本の宇宙開発

展示協力 : 宇宙航空研究開発機構

Exhibition Cooperator : Japan Aerospace Exploration Agency (JAXA)

1955 年の長さ23cm の超小型ロケット「ペンシルロケット」から始まった日本の宇宙開発。他国が小型化に苦労して実用化する道を歩む中、小さなロケットを大型化する道を歩んだ日本の技術は独自の発展を遂げました。そして、誰もやろうとしなかった技術を実現させ、世界が驚く数々の業績を残してきました。小型化・省力化をお家芸とする日本の宇宙開発技術は、様々な輸送技術や探査技術の実証機など、宇宙をもっと身近にするものとして世界中が注目しています。

Japan’s space exploration started in with the ultra-small, 23cm-long “Pencil Rocket.”While other countries had so much difficulty in downsizing rockets as a viable

application, Japanese technology has taken a unique evolution process of working on making small rockets larger.

出来るだけ遠くへ

太陽の光の力を受けて進むソーラー電力セイル実証機「IKAROS(イカロス)」。20 世紀初頭から太陽光を使うアイデアはありましたが、これまで誰も実現させようとはしていませんでした。薄くて大きな帆を、重力のない宇宙空間でどうやって広げるか。それを解決したのは、遠心力を使うというユニークな方法でした。そして、太陽の光を受けて加速して宇宙空間を進むという、SF のような技術が現実のものとなったのです。計画からたった2 年半で実現した世界初の「宇宙ヨット」は、太陽系大航海時代幕開けの期待を載せて、今も地球から遠く離れた宇宙空間を旅しています。

イカロス

行って帰ってくる

月以外の天体に着陸して、サンプルを持ち帰る世界初の偉業を成し遂げた探査機「はやぶさ」。

60 億km におよぶはやぶさの長い旅は苦難の連続でしたが、技術者や研究者の機転で乗り越え、重力がほとんどない小惑星への自動着陸や世界最長のイオンエンジンの稼働時間など、数々の世界初の偉業を成し遂げました。満身創痍で地球まで帰ってきた最後の試練は、サンプルの入ったカプセルを無事に地上へ送り届けること。約7 年間、出番を待ち続けたパラシュートは無事に開き、狙い通りの場所にカプセルが落下しました。

はやぶさ

効率よく宇宙へ

打ち上げ直前の準備に必要な時間と人員を大幅に短縮したイプシロンロケット。従来の固体燃料ロケットでは、打ち上げ直前の確認に長い時間がかかっていました。そのため、打ち上げに多額の費用が必要なことが課題でした。短時間で準備ができ、タイムリーに打ち上げることができるイプシロンロケットは、宇宙輸送新時代を切り開く次世代の固体燃料ロケットです。 ペンシルロケット

イプシロンロケット

地球の目を作る

アルマ望遠鏡

展示協力 : 国立天文台/ 三菱電機株式会社

Exhibition Cooperators: National Astronomical Observatory of Japan (NAOJ)/Mitsubishi Electric Corporation

日本の反対側、南米のチリ共和国北部にあるアタカマ砂漠には、66 台ものパラボラアンテナが18.5km 以上の平野にならぶ不思議な光景があります。

日本と台湾、北アメリカ、ヨーロッパ、チリが協力する国際プロジェクトとして完成した宇宙を見る「地球の目」アルマ電波望遠鏡です。光では見えない世界を電波でとらえ、視力6,000 に相当する解像度と高感度によって、銀河の誕生、物質の謎、生命のルーツを探ります。

日本のチームは、日本の精巧なモノづくりと世界最高性能のオプティックスやセンサーの技術を生かし、「いざよい」と名づけたパラボラアンテナ16 台と、難易度の高い周波数帯をカバーする3 種類の超高感度電波受信機、データを処理する高速計算機を作りました。富士山よりもずっと高い標高5,000 メートルの地で、建設地の調査から、望遠鏡の設計、建設、運用後の研究にいたるまで、中心的な役割を担い、世界最高の観測地に、人類ができる最高の技術によって地球の目を作ることに貢献しています。

The ALMA (Atacama Large Millimeter / submillimeter Array) Telescope, or “the Eyes of the Earth” were developed as a collaborative international project by Japan, Taiwan, North America, Europe, and Chile. ALMA is capable of capturing the world not

visible through light but made visible with radio wave, and it explores the birth of galaxies, the mystery of physical matters, and the origins of life with the unprecedented sensitivity and resolution equivalent to the eyesight of 6,000.

調査ノード
SIS 素子

観察の心臓部ともいえるセンサー(SIS 素子)

3つの周波数帯を観測するために3 種類のSIS 素子を作成している。それぞれ13 ~ 50 本のSIS 素子が含まれており、受信機にはこれを1 本1 本切り出して搭載する。

古代技術との対話

唐招提寺平成の大改修

展示協力 : 唐招提寺/ 奈良県文化財保存事務所/ 株式会社竹中工務店

Exhibition Cooperators: Toshodaiji Temple/Office of Cultural Assets Preservation in Nara Prefecture/Takenaka Corporation

世界遺産である「古都奈良の文化財」のひとつ、759 年に鑑真和上により創立された唐招提寺。その金堂の大改修は、阪神淡路大震災を契機に耐震性能の確保を目指し、1998 年から12 年の歳月をかけて行なわれました。このプロジェクトは、古建築の改修おいて、はじめてコンピューターを駆使した現代建築の「構造解析」の技術を採用し、古代の技をもつ職人による金堂の鴟尾(しび)を忠実に復元するなど、さまざまな時代の最高の技術が結集して実現されました。1200 年以上も前に建てられた金堂の改修では、建物の全てを一旦解体し、部材を調べ、構造を解析し、使えるものは残し、使えないものは伝統的技術を持つ職人たちの手により復元されました。当時の作った人は存在しなくても、古代の技術と対話しながら、残された部材や道具を読み解き、オリジナルへの敬意を込めて、現代に生き返らせ未来へとつないでいくのです。今回の補強部材は未来の修理の時に、改めて最適な方法を採用できるように、全て外せるようになっています。変えないための技術、これがまた、何百年か先の技術者へのメッセージとなるのです。

Toshodaiji Temple was established by the Chinese Buddhist priest Ganjin in 759 and is one of “the cultural assets of the ancient capital Nara” and is one of the World Heritage sites. The major repair of the Kondo (Main Hall) of Toshodaiji, which was prompted by the Great Hanshin Earthquake, took place for twelve years from 1998 for the purpose of enhancing the quake-resistant performance.

The “structural analysis” technology of modern architecture leveraging computerswas used for the first time in a project of repairing an ancient construction. The best technologies of various eras came together as seen in the example of accurately reproducing Shibi (ornamental ridge-end tiles) of the Kondo with a craftsman who keeps ancient skills.

各時代の図面

各時代の図面

釘と瓦

解体時に保存した釘と瓦。1200 年前の創建、そして500 年前の江戸時代の改修を経て、今に残る。

所蔵:唐招提寺

釘と瓦

大工道具

古建築の修復や伝統建築の建設に使用される道具。

(「ちょうな」と「やりがんな」)

所蔵:公益財団法人竹中大工道具館

大工道具

古代木造建築と現代建築の構造技術

〜ことばで読み解く「知恵」と「知識」のリレー〜

古代木造建築と現代建築の構造技術
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難問を技術で解く

東京スカイツリー

展示協力:東武タワースカイツリー株式会社/ 株式会社日建設計/ 株式会社大林組

Exhibition Cooperators: Tobu Tower Skytree Co.,Ltd/Nikken Sekkei Ltd./Obayashi Corporation

自立式電波塔として世界一の高さを誇る東京スカイツリーの建設。それは「地震大国日本の、大都市の真ん中に、超高層タワーをたてる」という難問を、これまで積み重ねた知恵と技術、そして新しい発想を掛け合わせて、なんとかして解ききるというプロジェクトでした。

建設時、まるで生きているかのように、ニョキニョキと上に向って成長していく東京スカイツリーは、毎日多くの人に見守られ、東日本大震災にびくともせずに完成し、日本の技術力に対する自信と、未来の街のシンボルとなりました。

The construction of Tokyo Skytree, the world’s tallest free-standing broadcasting tower, was a challenging project of “building an ultra-tall tower in the center of a big city of Japan, the country prone to earthquakes.”That challenge was met through the accumulated expertise and technologies plus new ideas. While it was being

constructed, the tower which kept growing rapidly as if it were alive attracted attention of many people every day and was completed without being affected by the Great East Japan Earthquake. It has since become the symbol of confidence in Japanese technology and also the symbol of the future city.

設計の難問 加工の難問

どこまでも確実に

新幹線

展示協力:北海道旅客鉄道株式会社/ 東日本旅客鉄道株式会社

東海旅客鉄道株式会社/ 西日本旅客鉄道株式会社/ 九州旅客鉄道株式会社

Exhibition Cooperators: Hokkaido Railway Company/East Japan Railway Company/Central Japan Railway Company/West Japan Railway Company/Kyushu Railway Company

1964 年10 月1日、東京―新大阪間を結び、「夢の超特急」としてデビューした新幹線。その開発は、国家プロジェクトとして、日本中の精鋭たちによる知恵と技術を集め、安全と品質にこだわった先鋭的な開発思想のもと、建設期間約6年間という驚異のスピードで実現しました。

開業以来、約半世紀、新幹線は1日も休むことなく人を運び、自ら進化しながら、日本の経済や文化の発展を支えてきました。その安全性、信頼性、利便性、快適性、環境性能は、日本が生みだす「技術とサービスの総合力」の象徴的な存在とも言えるでしょう。そして、毎日毎日、日本中の希望をのせて「どこまでも、確実に」走り続けます。

Ever since Shinkansen went into operation, it has transported people day in and day out for about half a century, and while going through evolutions, it has always supported Japanese economy and culture

The safety, reliability, convenience, comfort, and the environmental performance of Shinkansen may be considered to be a symbol of the comprehensive strength of Japan’s “technology and services.”

安全第一

新幹線は、在来線よりも幅の広い線路で踏切がなく、ATC(自動列車制御装置)というシステムによって、何かあれば自動的にブレーキがかかって止まるという、徹底した安全思想に基づいて開発されました。日々のメンテナンスに加え、沿線の地震、雨、風の計測、各設備の耐震補強など、数々の災害への取り組みによって、安全が守られています。各社、地震に備え構造物や軌道の強化、脱線・逸脱防止対策の推進、早期地震警報システムの導入を進めてきました。東海道・山陽新幹線の新型車両「N700A」では、ブレーキ性能を大幅に向上させ、地震等の災害発生時の停止距離をさらに短縮しています。

品質を保つ技

新幹線の安全で安定的な輸送サービスの質を支えているのが、徹底した保守管理のシステムです。毎晩行なわれる線路や電気設備の保守や交換に加え、数日ごとに「ドクターイエロー」と呼ばれる試験車両が営業路線を走行して設備状態をチェック。また車両は定期的に車両所で厳しい検査や修繕を受けて、すみずみまできれいになって、再び走り出します。品質を保ち、一日も休まず新幹線が走り続けるために、様々な技術開発とノウハウを蓄積し、確かで効率的なメンテナンスを行なうことで新幹線の安全安定輸送を守っています。

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進化し走り続ける

多様な気候に恵まれた日本列島のなかで、地震や台風などの自然災害に対応しながら縦横無尽に走る新幹線。安全性、利便性、快適性、環境への配慮を備えた、世界に誇る高品質な高速鉄道は、各地域でカスタマイズされながら、車両、管理システム、メンテナンス、整備などそれぞれの分野で、つねに進化を続けています。

早さへの挑戦

スピードへの挑戦は、騒音、衝撃や乗り心地、安全との戦いです。E5 系はトンネルに入った時の「ドーン」という衝撃波による音を緩和するため、車両と地上の両方で対策を行い、車両では先頭の形状を15m ものロングノーズにしました。また、台車部にカバーを取り付けたり、パンタグラフを工夫するなどして、世界一厳しい騒音環境基準をクリアしました。また、新技術を応用して車両の揺れを防ぎ、ブレーキ性能を向上させて、国内最高速320km/hのスピードを達成しています。

日本の大動脈の足

1日あたりの輸送人員約39 万人、列車本数約330 本、一年間の平均遅延時分は運行1列車あたり約0.6 分という、おどろくべき輸送力とダイヤ、そしてその正確さを誇る東海道新幹線。この安定輸送を支えているのが、走行する全ての列車の情報を、正確にコントロールする「新幹線総合指令所」です。列車の運転状況、線路や電力設備の状態、指定席の発売状況、列車や乗務員の運用まで、運行に必要なあらゆる情報がリアルタイムに管理されています。こうした運行実績の積み重ねが、利便性を追求した、毎年のダイヤ改正へとつながっています。

豪雪対策

世界有数の豪雪地帯を走る高速鉄道は新幹線だけ。その雪と寒さへの対策は、きめ細やかに、車両やレールに及びます。雪や寒さに対応するため、車体全体を滑らかな表面にして着雪しにくくしたり、ヒータを取り付けて凍結防止を行っています。また、雪が積もる前に、水をまいて雪を消す「散水消雪」と車両から落ちた雪を除去する「除雪装置」が、ポイントごとに細かく完備され、雪に負けない高速鉄道を実現しています。

省エネルギー

もともと省エネルギー性に優れた鉄道の特性を突き詰めた車両開発の継続により、最新の車両(N700A)の消費電力量は、開業時の0 系と比較してなんと約半分を達成。そのためには、電力制御の仕組み、車体の形状、カーブ時の減速軽減、ブレーキ時にエネルギーを電力に変えることで電力を再利用する仕組みなどあらゆるところで消費エネルギーを減らすこだわりの工夫があります。エネルギー問題が深刻化する将来に向けて、省エネな移動手段の新幹線への期待はさらに高まるでしょう。

日本を繋ぐ

新幹線は、国の方針に基づく整備新幹線として計画された地域を中心に、全国各地への開発を続け、日本中をつないでいます。今後、この技術は形を変えて、世界へも広がっていくことが期待されています。